2010年7月27日火曜日

ポーの『大鴉』(マラルメ訳)の挿絵

                                    美術館の廊下の天井。

              各展示室をつなぐクラシカルな廊下。 

(前回からのつづき)
     
 第Ⅱ部は「親密さの中のマネ:家族と友人たち」。
 ボードレールやエミール・ゾラ、エドガー・アラン・ポー、マラルメなど、社交的で才能あふれるマネの幅広い交友関係を伝えるコーナーだった。

 非常に興味深かったのが、マラルメが仏訳したポーの詩『大鴉』の挿絵である。  
 ポー、マラルメ、マネという超豪華メンバーによるこの超豪華仏訳書は、現在60部の現存が確認されており、1部(なんと!)1500万円ほどの値がつくこともあるという。
 この本の出版秘話については『マラルメの「大鴉」―エドガー・A・ポーの豪華詩集が生れるまで 』(バックナム著、柏倉康夫訳著)に詳しい。
 版元社長兼編集者の書簡にもとづいて編集されたこの本には、締め切りをちっとも守らない訳者(マラルメ)および画家(マネ)に泣かされ、書評で酷評され(直訳調だったらしい)、さっぱり売れないまま、刊行の1年半後に版元が破産するというドタバタ悲劇がつづられている。

 ちなみに日本にも日夏耿之介訳、ギュスターヴ・ドレ挿画という、仏版に勝るとも劣らない豪華な『大鴉』が存在する(薔薇十字社版、出帆社版などいくつかの版があるが、最近では2005年に沖積舎から刊行されている。『院曲サロメ』もそうだけど、こういう復刻はうれしい限り)。   (つづく)