2011年7月10日日曜日

東京国立近代美術館・常設展のパウル・クレー

美術館の収蔵作品展には、企画展に合わせてパウル・クレーの作品群も展示されていました。
             
小さな秋の風景(1920)油彩

秋色に染まった可愛らしい作品。
四角い石畳に、木の実や枯葉が隠れているようなイメージです。


破壊と希望(1916)リトグラフ

徴兵直前に描かれた作品なのかな。
当時のクレーの心情や時代の雰囲気があらわれている気がしました。

内面から光を発する聖女(1921)リトグラフ

クレーが描く「美女」や「淑女」や「聖女」って矛盾を孕んでいて、どこか反語的。

企画展に展示されていた《魅力(女性の優美)》というタイトルの作品にも、グロテスクで意地の悪そうな年配の女性が描かれていました。

ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』みたいな意味合いがあるのかな。
つまり、外見はタイトル通りの聖女や魅力的な女性だけれど、内面は絵に描かれているような醜悪さを秘めている女性の本性を描こうとしたとか……。

ドイツ語がわからないので確認できないのだけれど、もしかすると、クレーのタイトルにはダブル・ミーニングが込められているのではないでしょうか。



櫛をつけた魔女(1922)リトグラフ

これも、どうみても魔女には見えない。
可愛らしい「おじさん」かと思いました。
カリカチャア的なものなのかな。



棘のある道化師(1931)銅版
    
「棘のある道化師」って、諺か何かに由来しているようなタイトルですね。
どうなのだろう……。  




ペルセウス(機知は苦難に打ち勝った)(1904)銅版
    
ギリシャ神話の英雄がこんな顔に……。
アルチンボルドや歌川国芳の顔絵を彷彿させます。




空中楼閣(1915)銅版
 「空中楼閣」って蜃気楼のことだけれど、ドイツ語でもそうなのだろうか。
         


情熱の園(1913)銅版

人物が入り乱れているのかな……。
ソドムの街みたいに見える。


花のテラス(1937)綿布に油彩

これは綿布に描かれているので、質感が面白い作品でした。
布の端のほつれがそのままになっていて、それも作品の味わいとして経年変化を楽しんでほしいという画家の意図がうかがえます。