もう三週間ほど前になりますが、先月、玉川上水の近くの茶寮で
お茶事のお稽古がありました。
この日はあいにくの雨だったので、たたき染めのポリの小紋で参加。
雨に濡れた露地。
この茶寮は昼間はお茶のお稽古にも使われているお店で(女将さんが茶道の先生)、正午の茶事のほかにも、夜噺や五事式、真の茶事のお稽古もできるそうです。
寄付のお軸 『紅葉秋風に舞う』
寄付の煙草盆(織部焼の火入れ)。
つくばいで手と口中を清めます。
雨だったので、露地笠と露地草履のお稽古もできるかなと
期待したのですが、残念ながら雁行は省略でした。
室内を通って(にじり口ではなく)茶道口から茶室(初座)へ。
茶室のお軸は『関』。
亭主の御挨拶のあと、茶懐石が始まります。
わたくし夢ねこは、正客でも次客でもお詰めでもない、ヒラのお客さん役。
一文字に盛られたご飯、
粟麩の汁椀(季節柄、白味噌が多めの合わせ味噌だったので、
関西人の夢ねこにはことさら美味しかったです)、
向付は鯛の昆布〆。
向付皿は吹き寄せに見立てて、各自別々のデザインの器が
使われていました。
盃台にのせた盃が運ばれてきて、初献を交わしたあと、向付に箸をつけます。
一回目の飯器がまわってきて、汁替えのため汁椀が通い盆に
載せられていきます。
煮物椀の登場。秋鰺の真薯。紅白に見立てた大根と人参。
生湯葉、シメジ、菊菜、柚子の皮。
そうこうしているうちに、二献目もまわってきて、美味しくいただく夢ねこ。
お稽古忘れて楽しいひととき……。
焼き物は鰆(さわら)。
鰆って、春の魚だと思っていたのですが、今年の秋は鰆が豊漁らしい。
強肴は手前から時計回りに、秋刀魚の煮物、通草の巣籠り、海老芋。
海老芋が懐かしい~!
ここで二回目の飯器がまわってきます。
それから箸洗いが出てきて、吸い上げ。
八寸の海のものは、からすみ。山のものは松茸。
ヒラ客なので、ここまでまわってくるまでに盛り付けがだいぶ
崩れてしまっています。
ここで、主客献酬の盃事「千鳥の盃」となり、亭主と客が酒を酌み交わします。
湯斗と香のものが出て、湯斗から湯の子をすくって、椀を清めます。
このあたりの作法は禅寺のそれととてもよく似ていて、
(「懐石」の由来と同じで)
お茶と禅との深い関係を感じさせます。茶禅一味ですね。
(10月はまだ風炉の時期だったので)茶懐石のあとが初炭手前。
主菓子はこちらのお店のお手製だそうです。銘は「秋の野」。
紫芋と黄金芋の餡が甘すぎず、芋の香がほのかに漂って、
上品な美味しさでした。
(いつも思うのだけれど、ここで濃茶が出てくるといいのに。
この甘さのあとに、あの苦さがくると絶妙なんだけどなー。
なのになぜ、ここで中立ちするんだろ……。)
という、心の叫びもむなしく、中座して、腰掛待合でしばし待機。
この日は昼間行われる正午の茶事でしたが、雨が降っていて
「陰」の気が立ち込めていたため、
鳴物は、陰の気を相殺する「喚鐘(陽)」でした。 客一同つくばって拝聴。
(用意が整ったことを鳴物で知らせるのも、禅寺の作法。)
もう一度、つくばいで手と口を清めて、後座へ席入り。
後座では、お床のお軸ははずされ、お花が飾られています。
秋明菊、薊(あさみ)、藤袴、芒、杜鵑草……あとは分りませんでした。
濃茶席。水差しは虫明焼。雁が降下しているので落雁でしょうか。
茶杓の銘は「山里」、仕覆の裂地は東山緞子。
秋のわびしい風情がそこはかとなく漂います。
濃茶のお抹茶は、「緑毛の昔」(小山園)。
後炭手前(お稽古なので、みんなでのぞかせていただきました)。
羽箒の左にある香合は鉄刀木(たがやさん)でできた「木の葉」。
拝見の時の感触は、いかにも南方の樹木らしく、
少しねっとりとした質感でした。
火箸は(千家十職の)中川浄益。
金継ぎだらけの赤楽茶碗。
かつて勇名をはせた老武者の古傷を見るような
味わい深さがあります。
案山子と稲穂の可愛らしい干菓子。
これもこちらの手作りだそうです。
容姿端麗な筋筒釜。
枝折り戸の向こうが内露地。
茶花の咲く風情のあるお庭。