2010年5月24日月曜日
泰然自若にして融通無碍なるもの――細川家の至宝展・第Ⅱ部
第Ⅱ部は明治期に永青文庫の基盤となる財団を設立した細川護立のコレクションの展示。
このコーナーで圧巻だったのは、護立が無我夢中で集めたという白隠のコレクションである。
「達磨図」は白隠が83歳で描いたものだが、とてつもなくエネルギッシュな筆づかいで画かれ、気迫がみなぎっている。
また、「巌頭全豁語」や「一鏃破三関」などの墨蹟は豪放で決然としていて、観ているだけで迷いが取り除かれ、何事にも動じず、揺るぎない心になっていく気さえした。
観る者に「気(エナジ―)」を与えてくれるような、非常にパワフルな画や書なのだ。
白隠画は他にも、ハマグリの上に坐す蛤蜊観音(観音三十三身のひとつ。
ハマグリ好きの唐の文宗がハマグリの殻が開かないので香を焚いて祈ると観音様になったという故事に由来するが、なんとなくギリシャ神話(アフロディーテの誕生)の影響もあるように思う)が
エビやイカなどの魚介類を頭に載せた衆生や竜王に法を説く「蛤蜊観音」や、
擬人化された白鼠たちを描いた「鼠師槌子図」、
お福が男の尻にお灸をすえる「お福御灸図」など、
修業を積んだ禅僧ならではの軽妙でユーモラスな作品もあった。
泰然自若とした中にも「軽み」のあるところが白隠なのかもしれない。
このほか、護立のコレクションは、日本や西洋の近代絵画から、中国戦国時代の大壺や銀杯、前漢の狩猟文鏡、唐三彩、インドのグプタ時代や中国北魏から唐までの仏像、イランの白釉色絵人物文鉢など、じつに多岐にわたっていた。
閉館まで居座ったので、外はすっかり夜だった。
ライトアップされた昭和初期の和洋折衷建築が闇に映える。