山陰西部(高速の料金所で着ぐるみの鬼太郎から歓迎を受けるなど、水木しげる関連のイベントで沸き返っていた)と関西にW帰省した大型連休中、移動の合間に、信楽にある「陶芸の森・陶芸館」で開催されているハンス・コパー展に足を運ぶ。
(本当はMIHO MUSEUMに行きたかったのだが、時間と同行者の趣味の関係上、こうなってしまった。)
ルーシー・リーの下でアシスタントとして修業を積んだハンス・コパーは、古代エジプトやエーゲ文明の器や彫刻の影響を受けながら、独自の作風を築いていった。
コパーが中国陶器の影響を受けたことは一般的にあまり語られていないが、貴人台に載せた天目茶碗に似た作品もいくつかあった。均整のとれた彼の作風は、日本の陶器よりも、中国・朝鮮のそれに通じるものがある。
だが、コパー独自の感性が存分に生かされているのは、なんといっても、腕を胸の前で組み、両足そろえて直立するという独特のポーズをとるキクラデス彫刻を模した「キクラデス・シリーズ」や、鍬の形状を模した「スペード・シリーズ」だろう。
彼のキクラデスは作品ごとにボリュームが変わるため、基本フォームは同じでも、スリムでエレガントなものから、艶めかしい曲線を描くもの、アニメキャラクターのようにコロコロした愛嬌のあるものまで、実にさまざまだ。
無駄を完全に排した究極の洗練美を体現していながら、有機的なあたたかみを感じさせる彼の作品を前に、触れてみたい、この手でしっかりと包み込み、その質感と重量感を味わいたいという衝動に、何度駆られたことだろう。
ルーシー・リーの作品が見るだけで視覚を十分に満足させてくれるのに対し、見るだけでは飽き足らないのがコパー作品なのかもしれない。
ちなみにルーシー・リーの作品もいくつか展示されており、彼女の陶製ボタンが特に好きなわたしには、うれしいかぎりだった。彼女自身も芸術のように美しいルーシー・リーの作品には夢があって、見ているだけで幸せな気分になれる。
「ハンス・コパー展」は、今夏、汐留ミュージアムで巡回展示されるとのことである。
美術館の前庭に、なぜかパンダ。