2010年6月25日金曜日
釣瓶水指:見立ての美
六月最後の木曜日の夜、今年二回目のお茶の稽古へ。
今日のお花は半夏生と筋擬宝珠。
(上の葉をもう少しバッサリ切ればよかったかも。)
梅雨の晴れ間の暑い日でした。紺地に撫子柄の綿紅梅の浴衣で出席です。月に一度の女の子の日だったので、帯もラクに作り帯にしました。
今日のお点前は「釣瓶」。
名水を汲んできて茶を点てる「名水点」ではないため(公民館の水道水です)注連飾りはなく、水で十分に湿らせた木地の釣瓶水指を使ったお稽古でした。
注連飾りがなくとも、しっとりと水を含んだ釣瓶水指は、見た目にも涼しげ。これがあるだけで茶室内は一気に夏らしくなります。
昔は水が貴重だったし、空調もなかったから、いかにも「井戸からたったいま汲み上げたばかり」というフレッシュ感と清涼感の漂う釣瓶水差は、いま以上に高い演出効果を生み出したことでしょう。客人をもてなす強力なアイテムだったのではないでしょうか。
武野紹鴎の門下だった薮内剣仲が興した茶道の流派に薮内流があり、五代目・薮内竹心が江戸中期に著した『源流茶話』には次のような一文があります。
古へ水指ハ唐物金の類、南蛮抱桶或ハ真ノ手桶のたくひにて候を、珠光 備前・しからきの風流なるを撰ひ用ひられ候へ共、なほまれなる故に、侘のたすけに、紹鴎、釣瓶の水指を好ミ出され、利休ハまけ物、極侘は片口をもゆるされ候。
つまり薮内竹心によると、井戸の釣瓶を水指として初めて使ったのは武野紹鴎ということになります。
しかし、釣瓶を水屋で初めて使ったのは武野紹鴎だけれど、水差として採用したのは見立ての天才・利休であるとする説もあり(こちらのほうが一般的か?)、釣瓶水差の発案者が誰なのかは本当のところわかっていません。
いずれにしろ、井戸の釣瓶を水差に使うという豊かな発想と、それを茶の湯の世界の夏の風物詩として受け継いでいく日本人の感性って、ほんとうに素敵だなあと思います。
青苔を模したお菓子。
夏には他にも、七夕にちなんだ梶の葉(昔は短冊ではなく、梶の葉に願い事を詠んだ和歌をしたためた)を水差の蓋に見立てた「葉蓋」や、水の音が涼しげな「洗い茶巾」など、涼を呼ぶ風流な点前がいろいろあります。 暑い季節だからこそ、それを愉しむために、点前や道具にさまざまな工夫が凝らされているのですね。