第8章 内面への眼差し
ナビ派と象徴主義のコーナー。いよいよ、世紀末絵画の世界に入っていく。
偏愛するモローの『オルフェウス』については別項で詳述する。
ここではモローのほかに、彼の教え子でもあるルドンの
『目を閉じて』や、フレスコ画を彷彿させるシャヴァンヌの大作
『貧しき漁夫』、陰影法も遠近法も使わずわずかな色調だけで描かれたヴュイヤールの
『ベッドにて』、そしてうれしいことに、クノップフやハンマースホイまで展示されていた。
ボナールの
『ベッドでまどろむ女』は、日に何度も身体を洗う神経質なマルト(もちろんドニの妻とは別人)がモデル。
情事のあとが生々しい、乱れたベッドの上で、いまだに痙攣しているかのように足をひん曲げる女の姿。薄い下着だろうか、それとも他の「何か」だろうか、白く半透明のものが股間から足先にかけて描かれている。
夢も理想も神秘性も何もない、あまりにも卑近で、日常的で、ある意味、現実的な絵だ。「見ればわかる」というが、芸術とポルノグラフィーとを分かつものとは、本当のところ、何だろう?