2010年6月12日土曜日

オルセー美術館展:ゴッホとゴーギャン

         
第5章 ゴッホとゴーギャン


 ゴッホとゴーギャンの強烈な個性と自我が横溢するコーナー。

 『アルルの部屋』:ゆがんだ空間の中で、壁の絵もベッドも机もイスもそれぞれが烈しく自己主張し、こちらに迫ってくるように感じられて息苦しくなる。遠い昔、こんなアトラクションが遊園地にあった。部屋が歪んで回転するあのアトラクションに乗った気分だった。


 『アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ』
 ゴッホがアルルに行く前の、パリにいたころの作品。けだるい午後の川べりのレストランを淡い色彩で描いた静かで、どこか懐かしい感じのする絵だった。

 もしかするとゴッホが14歳年上の女性アゴスティーナと交際していたころに描いたのだろうか。ゴッホの精神状態が比較的穏やかな時期の作品という印象を受けた。
 

 ゴッホの作品の中でいちばん好きな絵も展示されていた。『星降る夜』。悲しいほど美しい絵だ。

(画像を拝借するわけにはいかないので)参考画像



 幸せがすぐそこまで来ているように感じられるとき、人はこんな絵を描くのだろうか。 
 ただ、それはたんなる幸せの予感ではなく、心のどこかで、いつか破綻の時が来ることを予感している、そんな脆くて壊れそうな儚い幸福の予感が、この絵からじんじん伝わってくる。

 手前の男女は睦まじく語り合う恋人同士と言われているが、わたしには彼らの存在が何かの暗示のように思われた。



 このコーナーには他に『《黄色いキリスト》のある自画像』や『タヒチの女たち』などが展示され、画面からゴーギャン・アウラがビームのように照射されていた。