2010年4月14日水曜日

Adrift Just off the Islets of Langerhans


 家にこもって積読処理に明け暮れる。

・『世界は分けてもわからない』(福岡伸一、講談社現代新書)
 こういう文才のある科学者が書いた本って本当に面白い! 

〈生命現象を分けて、分けて、ミクロなパーツを切り抜いてくるとき、私たちが切断しているものがプラスαの正体である。それは流れである。エネルギーと情報の流れ。生命現象の本質は、物質的な基盤にあるのではなく、そこでやりとりされるエネルギーと情報がもたらす効果にこそある。〉

 ATPからエネルギーを取り出す(ATPを分解する)とは、ナトリウムイオンを細胞膜の中から外へ組み出す作業のことであり、これにより細胞は細胞膜の内外にナトリウムイオンの不均衡(濃度勾配)をつねにつくりだしている。この不均衡こそが生命現象の源泉だと著者は言う。

 生命現象の反応はつねに動的なものであり、リン酸化と脱リン酸化はブレーキとアクセルの関係にあり、互いに他を律しながら平行を維持しているそうである。

 カルパッチョの切り取られた絵と須賀敦子の『ザッカレの河岸で』が、実験データを捏造した弟子を形容する科学者の言葉、「治すすべのない病」と終盤で結びつく、ややサスペンス仕立ての緻密な構成。そのお手並みはじつに鮮やか。


・『完全なる証明』(マーシャ・ガッセン、青木薫訳、文藝春秋)
 富や名声よりも、騒々しく煩わしい俗世を離れて、数学の美の世界に耽溺する日々を選んだ天才数学者の物語。さもありなん。

・『常識破りの超健康革命』(松田麻美子、グスコー出版)
 ヨーグルトもチーズも、コーヒーも緑茶もダメって、生きる悦びがなくなるやん。

・『雑食動物のジレンマ』(マイケル・ポーラン、ラッセル秀子訳、東洋経済新報社)
 体当たり取材の著者。いくらベジタリアンでも、人に招待されたときくらい柔軟に対応しましょう。

・『さあ、才能に目覚めよう』(マーカス・バッキンガム、ドナルド・O・クリフトン、田口俊樹訳、日本経済新聞出版社)
 内容は「ふうん」って感じ。これで才能に目覚める人なんているのかしらん。

・『孤独と不安のレッスン』(鴻上尚史、大和書房)
 著者の言う孤独って、わたしが思う孤独のレベルではないような。普通やん。

・『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(マーシー・シャイモフ、三笠書房)
 「幸せだから感謝するのではありません。感謝するから幸せなのです」という内容の本。

・『ボルヘスの北アメリカ文学講義』(J・L・ボルヘス、柴田元幸訳、国書刊行会)
 内容はごく普通のアメリカ文学講義。この本では英訳したものを柴田先生が訳していて、訳文は味わい深い。ボルヘスの他の作品も、英訳したものを層の厚い英日翻訳者が翻訳すればいいのに(lost in translationが生じる可能性はあるけどね)。