2010年5月24日月曜日

わが恋は松を時雨の染めかねて 細川家の至宝展・第Ⅰ部第1章

                                             
 金曜日(21日)の夕方、先月の講演会でいただいた招待券をにぎりしめて、
東博で開かれている『細川家の至宝』展に向かった。

 昼間はかなり暑かったが、日の沈みかけた上野公園では、新緑が涼しげに
夕風にそよいでいた。



 会場に着いてから知ったのだが、わたしが愚図愚図している間に
前期が終わり、展示替えがされていた。

 つまり、お目当てだった「織田信長自筆感状」も、宮本武蔵の「鵜図」も、
白隠の「半身達磨図」も「十界図」も「鉄棒図」も、菱田春草の「黒き猫」も、
小林古径の「髪」も、どれもこれもすべて観ることができなかったのだ。

 か、悲しすぎる……。

 気を取り直して。  以下は、心に残った名品についての覚書である。

 本会は「武家の伝統――細川家の歴史と美術」と「美へのまなざし
――護立コレクションを中心に」の2部構成になっている。

 第Ⅰ部「武家の伝統」の第1章「戦国武将から大名へ――京・畿内における
細川家」では、鎌倉時代から江戸初期の細川家の名品が、
具足や武具などを中心に紹介されていた。

 この中でとりわけ惹かれたのが、鎌倉時代の「時雨螺鈿鞍」

 当時の螺鈿技術の粋を凝らしてつくられた松と葛の精緻な図柄である。

 その図柄のあいだに、文字(慈円の歌「わが恋は松を時雨の染めかねて
真葛が原に風騒ぐなり」(新古今))が隠されているという、
非常に洒落た趣向になっていた。


 鎧の装飾、具足や軍配団扇や火縄銃にあしらわれた象嵌などにも
細川氏の武士としての美意識が随所に見られた。



 このコーナーには細川ガラシャの消息も展示されていた(よく言えば、女性らしい
たおやかな書風。正直言うと、ミミズが縦に長くのたくったような感じで、
わたしには判読できなかった)。