2011年3月29日火曜日

贖罪と無力感

悲しみ、憤り、絶望、どうしようもない無力感。
毎日、毎日、さまざまな感情が押し寄せてくる。

年収の何割かを被災地に送った。
文字通り、貧者の一灯。
これが、いまの夢ねこにできる精一杯のことだ。

地震と津波は、人為では如何ともしがたい天災だったけれど、いま起きている
原発事故は明らかに人災。

自分も含めて都会に住む人間が享受してきた便利さ、贅沢、そして70年代以降の日本の成長、繁栄、物質的豊かさ。
その影で、ジュクジュクと化膿し続けてきた虚栄の暗部が、未曾有の大地震と津波をきっかけに一挙に噴き出したのだ。

その犠牲となった原発周辺に住む人たち……。

危険区域から退避していた人々が、自宅に戻る姿が映し出されていた。

その中の酪農家の男性は、可愛い牛たちの健康管理のために、
毎日搾乳しているのだと純朴そうな表情で語っていた。
男性の息子さん(14歳)は、将来、父親のあとを受け継いで酪農家になるのだと、夢見るような明るく澄んだ瞳でインタビューに答えていた……。

わたしは、この映像を見てたまらず号泣した。

この人たちは、また元のような生活に戻れると信じて、避難している。
でも、先祖から受け継いだその土地は、大切に育ててきた牛たちは、
もう汚染されてしまっているのだ。
元に戻るには、何年も、何十年もかかるかもしれない。
もしかしたら、もう永久に元に戻ることはないのかもしれない。

いったい、この人たちが何をしたというのだろう!
なぜ、こんな目に遭わなければならないのだろう!

プルトニウムが検出された。
周知のように、プルトニウムの半減期は2万4000年。
ストロンチウム検出の報告はまだされていないが、放射性ヨウ素もセシウムも検出されたので、かなり高い確率ですでに漏出していると考えられる。
ストロンチウムの半減期は、およそ30年。

避難している人々にはそうしたことは伝えられていない。


原発には巨大な利権がからんでいる。
政財界の大物や地方の有力者、天下り官僚、御用学者が私腹を肥やすなか、いつも犠牲になり、虐げられるのは善良な弱者だ。

いや、悪いのは、悪徳利権者たちだけではない。

原発の恩恵に与り、便利な暮らしを当たり前のように営んできたわたしたちも、
物質的豊かさの底に潜在していた重大な危険に目をそむけて、
ひたすら鈍感に、利己的に生きてきたわたしたちも、同罪なのだ。

人間の強欲、傲慢、無知の結果が、今回の原発事故である。
人間ほど愚かな生き物はいない。
これだけ痛い思いをしないと、自分の途方もない愚かさに気づかないのだから。